この噺を覚えたのは、もう随分と前の事です。二つ目になったばかりの時に、師匠が独演会で演る事になり、その稽古に付き合わせて戴きました。師匠は、どんな噺の稽古をする時でも、くすぐりを思い付いたり、自分の工夫した処を聞かせて、こちらの意見を聞いて来るンです。勿論、意見なんて言えませんけどね。『いいですね』とか『それ、面白いです』とかしか言えません。あっ!、でも、『こんなンじゃァ駄目ですかねぇ』なんて、自分の思い付きを聞いて貰う事もあります。ですから、いつの間にか覚えちゃうンですよね。
『らくだ』もそうでした。ちゃんと向き合って稽古して貰ったンじゃないンです。師匠は菜漬の樽を担いで出掛ける所までで30分位ありました。大家の場面と八百屋ン所、酒に酔って行く所を時間をかけて丁寧に演っていました。これからサゲまでは10分位でしたね。
オイラが初めて演ったのは、二つ目になって5、6年目の地元での勉強会でした。マクラは無し、『あるお長屋に本名を馬さんというので、馬太郎とか馬吉と言うンでしょうが…』って入りました。その時の感想などは、もう三十年近く前の事なので、余り良く覚えていないのですがね。
最近では5年前、練馬の三凱亭で演りました。その時は、青木社中が応援に来てくれてましたので、『かんかんのう』という唄をマクラに使い、昨日もこれから噺に入って行きました。
この噺は、屑屋と兄弟分の逆転する所が要ですから、月番、大家、八百屋へ屑屋を使いに出す兄弟分に凄味を効かせて、屑屋は商人の弱さと温和しさも強調しておかなくてはなりません。ですから大家と屑屋の会話ン所も丁寧に演じなくてはなりませんね。って、これは師匠がそう言ったンですけど。
で、段々酔って来て、屑屋と兄弟分の立場が逆転する。此処は時間をかけて演りたい所。なので、屑屋に良く喋らせる様にする。なのでオイラは志ん生師の甚五郎のカエルでなく、狸の皮にしてみました。これは圓生師のですね。酔っ払いの噺は好きですから、この場面はオイラは楽しいですね。
昨日はサゲまで演ろうと思っていたので、屑屋の使いに行く所を兄弟分との会話だけで省略しちゃおうと思ったのですが、大家さんトコはどうしても端折れないので、八百屋ン所を抜いちゃいました。それでも三十分過ぎちゃいましたンで、やっぱりサゲまでは出来ませんでした。後十分はかかるもンなァ。
これから更に二人の酔っぱらいが出て来ます。この四人の酔っぱらいの演じ分け、難しいけど演ってて楽しいです。今度は是非サゲまで演りたいですね。
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